前立腺がんを改善したい人のための情報サイト
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前立腺がんの放射線治療について解説しています。
放射線をがん細胞に照射することで、細胞分裂や増殖を抑制し、がん細胞を破壊する治療法です。
前立腺がんに行なう放射線治療では、体外から高エネルギーのX線を使って治療する「外照射法」と前立腺内部に挿入した線源から放射線を照射する「組織内照射法(ブラキセラピー)」の2種類があります。
放射線治療では、放射線光線の単位を「門」と数えます。昔の外照射は、前立腺に対して対向4門照射で行なっていました。つまり対向4門照射は、4箇所から放射線を照射するという意味になります。
しかしこの方法では、放射線が前立腺以外の臓器にもたくさん当たってしまうため、不要なダメージを与えてしまうのがデメリットでした。
現在は、強度変調放射線治療(IMRT)という方法が開発されており、前立腺に対して、直接放射線をアプローチできるようになっています。
組織内照射法には「ヨウ素125密封小線源療法」と「イリジウム192」という方法の2種類があります。
「ヨウ素125密封小線源療法」は、陰のうと肛門の間にある会陰から前立腺内にチタン製のカプセルを永久的に埋入します。カプセルには、ヨウ素125という放射線源が密封。体内に挿入後、ヨウ素125が照射されて、体の内側から前立腺がんを治療してくれるのが特徴です。
「イリジウム192」はアプリケーター針というものを使用してイリジウム線源を挿入し、放射させます。ヨウ素125密封小線源療法とイリジウム192の手法はほとんど変わりません。
しかしヨウ素125密封小線源療法は永久的にカプセルを挿入しますが、イリジウム192は一時的に挿入するという点で違いがあります。
前立腺がんは血液検査を行ない「腫瘍マーカー」を調査。腫瘍マーカーという物質を調べることで、がんの進行状態を発見できるのです。前立腺がんの腫瘍マーカーでは、PSA(前立腺特異抗原)と呼ばれる物質の数値を調べます。
PSAの数値が大きいほど、がんのレベルが重くなると考えられるのです。ここではリスクの高い「重度な前立腺がん」と「再発した前立腺がん」への放射線治療について解説します。
PSA値が100以上ある重度の前立腺がんの場合、遠隔転移や再発のリスクが高くなります。そのため、ホルモン療法で全身治療を行なうのが主流。放射線治療は、ホルモン療法の経過が良好な場合に追加で行なうことがあります。
前立腺全摘出してPSA値が0になっても、数値が上がって再発することがあります。このようなケースでは、放射線治療の適応対象です。
手術後のPSA最低値よりも2ng/mL以上の数値が上昇、もしくは遠隔転移が発見された場合は、再発したと考えられます。
強度変調放射線治療(IMRT)は専用のコンピュータを使用し、変形するビームを複数用いることで、がんの形状に適した放射線を照射できる治療法です。
従来の放射線は同一方向からしか照射できず、形を変えることもできません。そのため、前立腺の周辺にある正常な組織や臓器に強い放射線を照射せざるを得ませんでした。
強度変調放射線治療(IMRT)は、がん細胞に対して放射線を集中的にあてることで、周辺にある正常な組織や臓器へのダメージを減らすことができます。副作用のリスクを抑えつつ、がん細胞へは強力に照射することが可能になりました。
複数の放射線を組み合わせて照射する強度変調放射線治療(IMRT)は、正確に照射できるかをしっかりチェックする必要があります。放射線治療は、CTを撮影して治療計画を作成すれば手術を受けられました。しかしIMRTは従来の放射線治療と比べて検証作業が長いため、治療開始までに長い時間を要します。
CT撮影をしてから2週間ほどは検証期間に充てられるのが一般的です。しかし、治療時間は約15分と短時間で終わります。
放射線治療の副作用には「治療中に起こるもの」と「治療終了後に起こるもの」があります。
放射線治療の副作用でもっとも多いのが頻尿です。放射線により膀胱の粘膜が刺激されて、治療中から尿意の間隔が短くなることがあります。症状が出ない方もいますが、症状が強い方だと1時間おきにトイレに行きたくなる場合も。頻尿改善薬を用いて対処します。
放射線を浴びて尿道が炎症してしまう副作用です。排尿時に痛みが表れます。軽度の痛みであれば経過観察。重度の痛みであれば、鎮痛剤を使用して対処します。
放射線治療後しばらくして起きる副作用に「直腸出血」があります。治療後に血便が出た場合、内視鏡を使って大腸をチェック。出血の出所を調べます。出血の程度によっては「APC;アルゴンプラズマ凝固法」というレーザー治療で止血を実施。直腸出血は、治療終了後1~3年の間で起こりやすい副作用です。
放射線治療後に血尿が続く場合は、「膀胱出血」の可能性が高いです。膀胱鏡検査で出血の原因を調べます。血液がたまって排尿できなくなる「膀胱タンポナーデ」という症状は、すぐに治療が必要。緊急外来を受診して、排尿処置を行なってください。
前立腺がんの放射線治療は「治療期間の短縮」と「定位放射線治療」が将来期待されています。
前立腺がんの放射線治療は、治療期間が平均2ヶ月と長期化しているのが現状です。患者の通院や入院の負担が非常に大きくなっています。今後は、強度変調放射線治療(IMRT)や画像誘導放射線治療(IGRT)を用いられ、治療期間がさらに短縮へと向かうでしょう。
放射線を照射する位置の制度を高めることで、1回の放射線量を増やし治療期間を短縮する方法を「定位放射線治療」と言います。早期肺がん・脳転移などで臨床されていますが、最近では前立腺がんにも応用している最中です。