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内分泌療法

内分泌療法(ホルモン療法)がどのような治療方法なのかについて解説しています。

内分泌療法(ホルモン療法)について

精巣や副腎から分泌される男性ホルモンをコントロールして、前立腺がん細胞の増殖を抑制する治療法です。薬物治療が主であり、注射薬と毎日服用する内服薬の2つを組み合わせる治療が多く行われています。

男性ホルモンを抑制する薬剤として、女性ホルモン剤(エストロゲン剤)や抗男性ホルモン剤(アンドロゲン剤)などを使用。精巣を去勢することで、男性ホルモンを作らせない外科治療を実施する場合もあります。

2種類の内分泌療法

内分泌療法には、男性ホルモンの分泌を抑える治療と、前立腺がん細胞が前立腺に作用するのを防ぐ治療の2種類あります。

男性ホルモンの分泌を抑えるためには、脳の視床下部へ働きかけるためにLH-RHアゴニストやLH-RHアンタゴニストを皮下注射します。薬が下垂体に作用すると、精巣や副腎での男性ホルモンの産出が抑制。内分泌療法では患者の状態に応じて、数ヶ月に1度のペースで注射します。

男性ホルモンが前立腺がんへ作用するのを防ぐ薬として、抗アンドロゲン剤をはじめとした飲み薬もあります。

内分泌療法(ホルモン療法)の外科治療

男性ホルモンを分泌させないために、睾丸そのものを摘除する治療法もあります。数日の入院が必要になりますが、手術時間自体は30分ほどと短時間で終了。

原因の根本に働きかける治療法なので抑制効果が高い反面、術後の男性ホルモンの回復は望めないうえに、肉体的な負担が大きい治療法です。

また皮下注射LH-RHアゴニストやLH-RHアンタゴニストの皮下注射で同等の効果を期待できることがわかっているので、内分泌治療では薬物治療が中心になっています。

内分泌療法(ホルモン療法)の特徴

監視療法や化学療法と比べて、前立腺がんの幅広いステージにおいて選択できる治療法です。がんが前立腺がんの中に留まっている中間リスクの段階から転移が見られる状態まで、他の治療法と組み合わせも含めて検討できます。

がん細胞が前立腺だけでなく被膜を超えて広がる局所浸潤がんでは、内分泌療法単独の治療だけでなく、放射線療法と組み合わせる場合も。一方、周囲の早期への転移が見られる周囲臓器浸潤がんや転移がんでは、内分泌療法単独で治療を行います。

また前立腺の中にがん細胞や、留まる限局がんでは、手術療法や放射線療法の前後に内分泌療法を行なうことで、治療効果を高めます。

内分泌療法(ホルモン療法)が難しい状態

転移がんを中心に、内分泌療法で効果が得られなくなる状態を「再燃」と呼びます。この場合、治療法は化学療法へ変更するケースが多く見られます。

薬剤を変える選択もありますが、日本で承認されていない海外の薬だと、生存率を改善する効果が示されていたとしても投薬できません。そのため日本の内分泌療法に関する問題として、使用できる抗がん剤が限定されていることが指摘されています。

また女性ホルモン剤や副腎皮質ホルモン剤などに切り替えても、しばらくは効果が確認できますが治療が長期にわたるにつれ、効果が弱まっていきます。

このような状態を「去勢抵抗性前立腺がん」と呼びます。薬物治療単独ではなく、化学療法や副腎皮質ホルモン剤による治療と組み合わせることで、がんへの効果を高めます。

内分泌療法(ホルモン療法)のメリット・デメリット

メリット

  • 前立腺局所だけでなく全身のがんを抑制できる
  • 進行性の前立腺がんに適応がある治療法
  • 薬物治療が主になるため体への負担が少ない

デメリット

  • 治療効果が弱まる「再燃」状態になる場合がある
  • がんの体積が減少するものの、完全になくなるわけではないので治療は継続して行なう
  • ホルモンバランスが変化する治療法のため、女性化乳房や性機能障害などの副作用が起こる

内分泌療法(ホルモン療法)で起こりうる合併症

ホットフラッシュ

LH-RHアゴニストやLH-RHアゴニスト、抗アンドロゲン剤などの薬剤の影響で、副作用が起こる可能性も。代表的な症状として挙げられるのが、のぼせや急な発汗などのホットフラッシュです。

主に更年期障害の症状として女性に多く見られるホットフラッシュですが、治療で男性ホルモンが抑制されると6~8割の男性が経験します。

治療をはじめて数週間後に症状が表れることが多いですが、症状は一過性のもので数カ月後には収まることがほとんど。副作用が強い場合には、漢方薬の使用や薬剤の変更、治療の中止などの対策を行ないます。

性機能障害

ホルモンバランスが崩れることで、勃起障害や性欲低下などの性機能障害が1年以内に起こるケースが多く見られます。ホルモン療法を休止すると、ほとんどが回復へ向かう副作用です。

女性化乳房、乳房通

治療前は少なかった女性ホルモンが相対的に多くなることで、乳房が大きくなる「女性化乳房」や乳頭に痛みを感じるなどの副作用が起こる場合もあります。

なかでも抗男性ホルモン剤単独療法を行なった際に副作用が起こりやすく、発生率は16~71%ほど。乳腺への予防放射線聴者が対処法として取られていますが、高度な女性化乳房が見られる場合では、乳腺を切除する形成手術を行なうこともあります。

骨への影響

治療開始からの1年はミネラルが3~5%減少することから、骨密度の低下や骨折しやすくなるなど骨への影響も見られます。そのため述語は、カルシウムの摂取が重要です。アルコールやカフェインの摂取の制限、禁煙なども必要になります。

そのほかの副作用

  • 肝機能障害
  • 貧血
  • 糖尿病

内分泌療法(ホルモン療法)後の経過

注射後、ホルモン療法の効果をどの程度の期間保てるかどうかは、1人ひとり異なります。長い場合は10年以上も前立腺がんの進行を抑えられることも。しかし治療前から転移が見られる場合や悪性度の高い場合は、早期に治療効果が弱まってしまいます。

治療効果は、PSA値で判断。低い値で維持していれば、がん細胞が抑えられているがわかります。反対に値が上昇している場合は、病態の悪化を意味しているので注射や内服薬への変更が必要です。

しかし、PSA値だけで病態を判断するわけではなく、CTや骨シンチグラムなどの画像診断での評価も定期的に行います。

内分泌治療でがん細胞の抑制に成功したとしても、再発を防ぐためにも定期的な診察が欠かせません。同時に、再燃の状態を防ぐためには、薬剤だけの力を頼るのではなく、自分自身でも栄養バランスの整った食事を摂る・運動するなどの再発予防が大切です。

ここでは、前立腺がんを予防するために知っておきたい6つのポイントをまとめました。前立腺がんを正しく付き合い、自分らしい毎日を送るヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

参照元:アストラゼネカ株式会社 内分泌療法

参照元:国立がん研究センター がん情報サービス 前立腺がん(ぜんりつせんがん)

参照元:順天堂大学・順天堂医院泌尿器科 前立腺がんの薬物療法

参照元:がんの最先端治療・闘病サポート-再発転移がん治療情報 【QOL(生活の質)】がん患者さんが悩むホットフラッシュの原因と対処方法

参照元:東北大学大学院医学系研究科 前立腺癌に対するホルモン療法について