前立腺がんを改善したい人のための情報サイト
前立腺がんを改善したい人のための情報サイト
セレニウムとも呼ばれるミネラルの一種。細胞が壊れるのを防ぐために働く「抗酸化酵素」の構成成分のひとつです。がんや老化の原因になる活性酵素の働きの抑制や抗酸化に欠かせないビタミンCの再生を促すなど、がんの原因に働きかけてくれる成分。
また体内で酸化ストレスが高まった時に免疫系の働きを正常に保つ働きも。甲状腺ホルモンの活性化を促す酵素の構成成分でもあり、基礎代謝を高めたり、エネルギー消費量を増やしたりと体を動かすためのサポートも行っています。
かつおや豚肉などに多く含まれており、1日の摂取量の目安は成人男性が30μg、成人女性ならば25μです。国内においては毎日の食事で摂取しやすいため、不足する心配が少ない成分ですが、海外には土壌にセレンがあまり含まれていないために欠乏症が起こることも。
有名な事例は、2013年の中国東北部で多発した心筋疾患です。土地の名前を取って「克山病」と呼ばれており、その地域に住む住民にセレンを摂取してもらう栄養政策を実施したことで、有病率や死亡率が減少したと報告されました。それだけ人の体に必要な成分であることがわかります。
ヒトを対象とした集団研究では、血液中のセレン濃度が前立腺がんの発生リスクに関係しているとする報告が多く、「セレンの摂取が前立腺がんリスクを低下させる」という見方が強くあります。その一方で「セレン濃度が高いとリスクが高まる」という反対の報告も多く、一貫性はありません。
またサプリメントの服用により1日の摂取量を超える場合には、セレンが体内で有害になるという報告もあります。とくに日本人は普段の食事から必要なセレンを摂取できていることが多いため、摂取には注意が必要です。
2004年に米・ハーバード・メディカルスクールで行われた研究では、前立腺がんになった男性グループ586名とならなかったグループ577名の追跡調査を13年行いました。
比較したのは、血中セレン濃度。5つのグループを濃度別にわけて、前立腺がんとの関係を調査したところ、高いグループのがんになるリスクは48%も低くなることがわかりました。
マウスを使って前立腺がんの予防効果を調べた研究では、大人と若年のマウスでセレンの影響が異なることがわかりました。6ヶ月あるいは1ヶ月の間、セレンを豊富に含む餌か一切含まない餌のいずれかを与えた後、ヒト前立腺がん細胞をマウスに注射。
セレンを多く摂取していた大人のマウスは、腫瘍の発生が抑えられることがわかりました。しかし若年のマウスにはセレンの摂取量で前立腺がんリスクに差がみられませんでした。
前立腺がんを発症したマウスを対象に、セレンあるいは水のみを与える治療を実施し、比較しました。セレンを与えられたマウスは、前がん性病変の増殖速度がゆるやかなだけでなく、破壊されたがん細胞の数も水だけを与えられたマウスよりも多い結果に。
この研究で用いたセレンは、MSeAとメチルセレノシステイン(MSeC)の2種類でしたが、いずれも前立腺がんリスクを抑えられると考えられます。また前立腺がんの罹患から16週目で治療を始めたマウスよりも10週目で始めたマウスの方はあまりがんが広がらないことも確認されており、セレンによる治療は早期に始めることでより高い効果を期待できることがわかりました。
数多くの先行研究において「血清セレン濃度が高いと、前立腺がんのリスクを抑えられる」と報告されている一方、まったく逆の結果を報告している研究もあります。平成16年から18年にかけて群馬大学が行なった研究では、血清セレン濃度が高いグループは、前立腺がんのリスクが高くなる可能性を示唆。
対象となったのは、100人の前立腺がん患者。前立腺がんになったことのない男性200人の血清を比べて、セレン濃度を比較しました。
先行研究と群馬大学の研究の違いは、既に前立腺がんを罹患した患者を対象に行っていたこと。前立腺がんが発生すると、体内でセレンの濃度が高くなるのではないかと考えられています。
フレッドハッチンソンがん研究センターは、2004年にセレンとビタミンEのサプリメントが前立腺がんにどのような影響を与えるか研究した結果を報告。サプリメントを摂取する前のセレン体内濃度が高いと、前立腺がんのリスクが高くなる可能性を示唆しました。
研究では、前立腺がんの診断を受けた1,739人と、前立腺がんではない3,117人を対象に、ビタミンEとセレンをサプリメントで摂取してもらい前立腺がんへの影響を比較。試験が実施されたのは2001年から2008年にかけての7年間。
12年の追跡調査を実施する予定でしたが、セレンに保護作用がなく、またビタミンEも前立腺がんのリスクを高めることが示唆されたため、早期に中止されました。
研究の最終的な結論として、「セレン・ビタミンEのサプリメントともに効果が確認できなかっただけでなく、1日の摂取量を超えてしまうことでがんリスクを高めてしまう」と報告。セレン濃度がサプリ摂取前から高い男性であればセレンが毒性につながり、低い男性も前立腺がんのリスクが63%増加しました。
2013年の報告では、1日の摂取量の100倍近いセレンを摂取しても効果がないという結果が発表されました。
研究では、前立腺がんリスクの高い男性に200μgまたは400μgのセレンかプラセボのいずれかの投与。5年間実施しましたが、前立腺がんの発生率やがんの進行度に違いは見られませんでした。
セレンの摂取量に注意が必要であるように、多くの健康成分の効果や安全性について服用する前に十分確認しておくことが大切です。
こちらのサイトでは、酵素やアガリクスなど複数の健康成分を比較し、研究報告などを解説。前立腺がん対策の参考にしてください。
参照元:eatsmart セレン
参照元:医書.jp 克山病とセレン欠乏 (臨床検査 34巻11号)
参照元:日経メディカル セレンは、前立腺がんを予防する、血中濃度が高いとリスクが半減--米ハーバード・メディカルスクールが解明
参照元:がん情報サイト 前立腺がん、栄養、栄養補助食品(PDQ®)
参照元:[pdf]セレンによる前立腺がん予防-血清セレン指標と前立腺がんとの関連を検討する症例対照研究-
参照元:海外がん医療情報リファレンス セレンとビタミンEのサプリメントで前立腺癌リスク増加の可能性/ フレッドハッチンソンがん研究センター